那賀町の木材産業を見るツアーを開催しました!

那賀町「脱炭素化」プロジェクトのキックオフミーティングの翌日。同メンバーで町内の木材産業に関わる4つの場所を訪れ、現場を見学させてもらいました!
目的は木材の加工〜暮らしに活かされるまでの流れを知り、地域の自然と産業のつながりを感じること。
脱炭素化に向けてどんなアプローチができるかのヒントを得ることだけでなく、木材×観光の新しい取り組みとして"木製品や地域の魅力を広めるツアー"を開催することも見通して企画されました。

訪問先①若杉さん
若杉さんは那賀町の相生・朴野という場所で30年近く木材の製材〜加工を行う製材所。
隣接する工務店が扱う建築用の木材を作ろうとスタートした後、「山にある資源をもっと使ってもらえるよう、建材に限らずいろいろな木材を作っていきたい」と歩みを続けています。
若杉さんでは森林が木材になるまでの流れを中心に、木材産業のあれこれを教えていただきました!
#山の木々が製材所にやってくるまで
若杉さんの製材所内に大きな丸太が横たわっています↓

これらの木々は山から伐り出された後、那賀町の場合は木頭森林組合が開く競り市場を経て製材所にやってきます。漁港の市場で魚を仕入れするように、10円単位で値を交渉し木を入札ていきます。
市場で入札されなかった「元落ち」と呼ばれる木も森林組合から製材所などの業者に直接「安めに○○円で買ってくれないか」と交渉があり卸されていくそうです。シンプルですが少し意外な気もしますね。
#製材所で丸太が木材になるまで
丸太の状態のままでは何をするにも扱いづらいですよね。
木を私たちが使いやすい形、つまり木材に変身させることが製材・加工業に求められる役割となります。

丸太の状態から板材や角材の形に切り出すのがバンドソーという機械。作りたいサイズの厚みなどを1mm単位で設定し丸太を挿入すると板状に加工してくれる何とも偉大な存在です!若杉代表の岡本さんから「一つ一つ違う木の年輪を見極めて加工しています」と説明があり、若杉さんの丁寧な仕事ぶりが想像されました。


バンドソーで形を切り出したら、研磨機(グラインダー)で木の表面を薄く削り磨いていきます。

この工程後の木材はとても艶が出ているように見えて一気に商品らしくなっていました!
ここで出るカンナ屑について「困ってます」と若杉代表の岡本さん。聞けば「製材する上で出てくるおが粉は隣接する牛舎へ、木の周辺部にあたり切り落とされる辺材は木材チップ製造工場へ、とルートがあるけれど、カンナ屑は行き場がなく燃やすしかない」との事でした。
すると、那賀ウッド代表の庄野が「那賀ウッドでカンナ屑を使って加工品にするのアリですね!」と手を挙げてポジティブな雰囲気に。町内事業者同士の連携が始まる予感がしました!


#木と暮らしの関係
若杉さんで製材・加工された木材は土木・建築の現場、林道の舗装材、町の防災倉庫の材料などに使われていきます。

木材は仕事や暮らしの中で今も昔も常に必要とされている一方で、暮らしや仕事に身近だからこそ世の中のニーズの変化を見つめながら対応し続けています。
どんな変化があるのか、本ツアーに参加していた那賀町の相生・平野にある「平井製材所」を営む平井さんも岡本さんと共に教えてくれました!

例えば
今は質がよくても売れない!
1本の木の中で根元の部分を「元木」と呼びます。元木は枝が少なく節が見られないため、加工した時に節があると見える茶色い丸模様がなく、木目が映える美しい木材となります。

平井さんはこの節のない材について「昔はひくて数多でしたが今は需要が少なくなっているんです」と話します。木の上の方、つまり枝がたくさん生えている部分は節が出るため無節の材と比べて質が劣るとされていますが、今は無節材よりも節のある材の方がニーズが高いそうです。

節がある材は木の上部から伐り出されるので丸太が小さく、量産やオートメーション加工が多い現代において扱いやすさがメリットとなります。また、無節材と強度は変わらないのに安価であったり、節が多い方がオシャレで人気だったりと、その需要が高まっているんだとか。「質がいい木のニーズが減っていることは那賀町の木材産業のみならず全国的な課題ですね」と平井さん。岡本さんは「無節の長尺材をカフェの大きい梁とかに使ってもらいたいなぁ」と思いを吐露していました。

「林業だけで食っていく」のは難しい。
数十年前、戦後の好景気需要の波に乗って木材は高値で売れていた頃は、苗木を植えて伐ったらお金になりまた植え伐って…という循環ができていました。
しかし、安い輸入材の流通により国産材のニーズ不足や値下がりが進み、植えて育った木々は放置されるように。
原木の値は10分の1程度(いい時で1町500万円くらいだったが今は50万円ほどになったとの事)に減ってしまったそうです。平井さんは「50万円では事業費でほとんどなくなってしまいます。森林組合は山の木を1円でも高く売って、山主さんや山を管理する林業会社にお金をたくさん返す役目がありますね」と熱く語っていました。

輸入材が手に入りづらくなり国産スギの気運が高まっている今、スギが山一面に植っている那賀町で木にまつわる産業を盛り上げていくためにどんなアクションを起こしたらよいのか…。考えさせられる時間となりました!

岡本さんはこれまでの話を踏まえて「作った木材の販路を拡大していくことは我々ではなかなか難しいので、みなさんのお力を借りられたらなと思っています」と木材産業のパワーアップに向けて思いを発していました。
訪問先②木頭森林組合チップ工場
木材のチップとは、木材を細かく切削したり砕いたりしてチップ状にしたもの。紙づくりや木工ボードの原料、チップボイラーの燃料などに用いられるそうです(林野庁webサイト参照)。

その木材チップの製造現場が那賀町の相生・雄(おんどり)にあります。木頭森林組合さんの工場になります。

製造ラインを経てチップにしたものと、キャタピラ付の製造機でチップにしたものと2種類が作られています。



製造ラインを通したチップは、上手くチップ状にならなかった粗い樹皮や木片を除く工程が入ります。そのため綺麗な形のチップばかりが出来上がり、製造機のみで加工したチップと比べてグレード良いとされるそうです。




若杉さんのような製材・加工の現場ではカンナ屑のように切り除かれる部分がどうしても生まれますが、丸太の周辺部分にあたり挽き落とされる「背板」はチップに加工されることも多いそうです。
ロスフードのように、ロス木材をなくし森林資源を有効活用していくためにもチップ工場の存在は必要不可欠ですね!
まとめ
若杉さんの製材・加工所や木頭森林組合さんのチップ工事のリアルを見させてもらったことで、那賀町の森林が人々が使う木材になるまでの流れを掴み、木材産業の課題や木材の価値までをも知ることができました。
次回は那賀町の木材産業ツアーで見えた、木材加工におけるさまざまなアウトプットをお伝えします!


